診療内容
対象となる代表的なこころの病気
統合失調症
脳内の“まとめる”機能が低下し
幻覚・妄想などの症状が現れる。
統合失調症は、脳のさまざまな働きをまとめることが難しくなり、幻覚や妄想などの症状が起こる病気です。
以前は、「人柄が変わる」や「予後が悪い病気」と考えられていましたが、現在は、早期発見・早期治療に至るケースが増えたことや新しいお薬・治療法の開発が進んだことで、多くの患者さんが回復を期待できるようになりました。
統合失調症は早期にお薬による治療を開始し、適切に継続すれば再発を抑えることができます。統合失調症の方の約半数が社会生活を問題なく営むことができているとも言われています。
統合失調症の症状
脳内のネットワークに不調が生じると、幻覚や妄想など多彩な症状が現れます。
●妄想
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○○さんに嫌がらせをされている(被害妄想)
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私は神の隠し子である(誇大妄想)
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私はテレパシーを通して□□を支配することができる(影響妄想)
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周囲の人たちに、私の悪口を言われている(関係妄想)
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他人に自分(患者さんご本人)の考えをしられている
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誰か他人の考えが自分(患者さんご本人)の心に挿入された
など
●幻覚
幻聴、幻視、幻臭、幻味、幻触などがあり、統合失調症患者さんで最もよくみられるものは幻聴です。
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患者さん自身や物事についての実況中継が聴こえる
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患者さんに対する名誉毀損や脅迫されている、声が聴こえる。
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患者さんに対する直接の命令(命令幻聴)が聴こえる
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一人または複数の声が聴こえる
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人に知られたくない内容が話されているように感じる
など
●解体した会話
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話にまとまりがない
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話の内容が支離滅裂
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話の内容が脱線する
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話が停止する
など
●緊張病性の行動
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全く動かない
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全く話さない
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目的のない大暴れ
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不自然な姿勢
など
●感情の変化
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表情が乏しい、無表情
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感情の動きが少なくなる
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不安や緊張が続いている
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他人の感情や表情を正しく理解できない
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相手の気持ちを誤解する
など
●意欲の低下
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引きこもるようになった
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何もせずにゴロゴロしている
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入浴や洗面をしない
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整理整頓しない
など
“病気であること”が認識できない場合も
統合失調症の患者さんは、自分が病気であるという自覚(病識)が乏しい場合があります。
患者さんは幻想や妄想をリアルに体験されているため、周囲の人に幻想や妄想を否定されても、なかなか信じることができません。病識がない状態では、医療機関の受診や治療を拒むこともあります。
当院は、患者さんご本人が納得して治療に取り組むことが大切だと考えており、統合失調症を正しく理解いただくことから治療のスタートだと考えています。また、ご家族や周囲の方向けのカウンセリングも実施しています。
統合失調症の治療
薬物療法
統合失調症の薬物療法の中心は抗精神病薬というお薬です。
抗精神病薬には、錠剤、口腔内崩壊錠、顆粒・細粒、液剤、注射剤などがあります。
統合失調症のお薬は飲み忘れないことが大切です。主治医とよく相談し、病気の状況や生活スタイル、飲みやすさなどから自分に合ったお薬を選んで、飲み忘れをなくすようにしましょう。
抗精神病薬の効果が十分でない場合は、足りない部分を補うためにいくつかの補助的なお薬を治療に使用することがあります。過度の不安や緊張には抗不安薬、不眠症状に対しては睡眠導入剤、抑うつ症状には抗うつ薬が用いられます。また、幻覚や妄想と躁うつ気分が混合してみられる場合には気分安定薬が用いられます。
社会療法
統合失調症の患者さんの社会復帰に向けて、デイケア治療、共同作業所への通所、SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)をお勧めすることがあります。
●SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)とは?
社会生活を営むためのスキルをトレーニング(訓練)することで出来ることを増やし、より生活しやすくなることを目的としています。挨拶、人に何かを依頼したり、断ったりするなどのコミュニケーションを身につける場所です。