診療内容
対象となる代表的なこころの病気
せん妄
高齢者に起きやすい、混乱状態
せん妄とは精神症状の一つで、異常な精神状態や混乱状態を指します。軽度~中程度の意識混濁を起こし、錯覚や幻覚、認知障害、不安や恐怖感、混乱や精神的興奮が現れます。どの年齢の人にも起こり得ますが、高齢者で最も多くなります。特に高齢者では、別の重大な病気の兆候である場合もあるため注意が必要です。手術後の高齢患者、アルコール依存症、認知症の患者に起こりやすく、まずは安全な環境を確保し、症状が落ち着くまでケアすることが大切です。
せん妄の症状
せん妄は一時的な状態であり、下記のような症状が突然始まり精神状態が不安定になりますが、数日~1週間ほどで落ち着きを取り戻す場合が多いです。
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注意力がなくなる
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最近のことを思い出せない
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自分が誰かがわからなくなる
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歩き回ったり、支離滅裂な行動を取る
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急に眠くなったり、目覚めたりする
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幻覚に怯え、存在しない人や物が見える
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強い妄想を抱く
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イライラ、錯乱、興奮、不安
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攻撃的になったり、内向的になったりと不安定
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感情、人格の変化
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手の震え(アルコールせん妄の場合)
など
せん妄と認知症の違い
高齢者のせん妄は認知症と間違いやすいため、注意が必要です。
●せん妄
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発症時期が特定できる。
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急激に症状が現れる。
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症状は時間が経つと戻る(可逆的)。
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1日のうちで症状が変化する(日内変動がある)。
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意識はぼんやりしている(意識障害)。
●認知症
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発症時期が曖昧である。
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徐々に症状が現れる。
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症状がずっと続く(不可逆的)。
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1日のうちで症状の変化は穏やかである(日内変動がない)。
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意識ははっきりしている。
せん妄の原因
●薬剤
薬剤の中には、せん妄を起こしやすい薬剤があります。
高齢者の場合、薬剤の影響を受けやすく、処方薬が原因になる場合もあります。
●病気
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認知症
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脳疾患(脳血管疾患、脳炎、脳腫瘍)
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糖尿病
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腎不全
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肝不全
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心不全
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呼吸不全
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甲状腺疾患
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パーキンソン病
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脱水(電解質の濃度異常)
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悪性腫瘍
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感染症
など
●年齢
高齢者は特に脱水や薬、感染症の影響を受けやすいです。
●住環境の変化
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リフォームやベッド位置の変更
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入院による環境変化
など
せん妄の種類
夜間せん妄
夕方から夜間にかけて起こるせん妄です。
昼間に比べて刺激が少ないため、状況認識が困難になり、せん妄状態を引き起こします。
日中は変わったことがないのに、夜間にだけせん妄が出現する方もいます。
昼間十分に運動や活動を行ってもらい、昼夜のメリハリをつけるなどすると予防できます。
術後せん妄
手術の後は特にせん妄が起こりやすい期間となります。
手術後の痛みや急激な環境変化、投薬や麻酔の影響、心理的ストレス、身体を自由に動かせない、などの様々な要因が絡みます。
通常1週間程度で落ち着いていきますが、十分な経過観察が必要です。
せん妄への周囲の対応
様子を見る
興奮したり、逆に不安になったり、幻覚が見えたりする場合は、無理に引き止めたり反論しないようにしましょう。こちらのリアクションに対してますます興奮し、最悪暴力に発展する恐れがあります。否定せずに様子を見ながら、症状が落ち着くのを待ちましょう。
不安感を取り除く
穏やかに声をかけるようにしましょう。意識障害を起こしている可能性があるので、まっすぐに顔を見て、ゆっくり相手の話を聞いてあげてください。
せん妄の治療
ほとんどは入院して治療を行います。
看病が可能な家族がいる場合は、自宅で療養する場合もあります。
薬剤(処方薬)を見直すだけでも改善する場合がありますので、まずは専門家に相談しましょう。